🌙 世界観プロデュース便り

物語を灯すブース、はじめての展示会。Web販促&デジタル活用展2025出展レポ

1年前の私が聞いたら、きっとびっくりすると思います。
ビジネス展示会に、自分の世界観をそのまま持ち込むなんて──
あの頃はまだ、自分の創るものを「仕事」として届けることに、勇気が持てなかったから。

それでも今回、「Web販促&デジタル活用展2025」への出展を決めたのは、
表現のかたちが少しずつ変わってきたからでした。
これは、ただの展示会ではなく、「自分の物語に、一歩踏み出した日」の記録です。

まだ“自分の世界”を語るのが怖かった頃

私はこれまで、
企業やクライアントのご依頼で、
アニメーション動画やマンガ動画を制作する仕事をしてきました。

そこではすでに“プロ”として見ていただいていて、
実績も信頼も、少しずつ積み上げてきたつもりです。

でも今回の展示会は、
まったく違う意味で、私にとって大きな挑戦でした。

だって今回は、
誰かのブランドやサービスを伝えるんじゃなくて──
**「私自身の世界観を、そのまま表現する場」**だったから。

自分の創ったキャラクターや物語、
その奥にある価値観や空気感を、
ビジネスの現場に“さらけ出す”ようなもの。

仕事では認められてきたけれど、
この世界も、ちゃんと受け止めてもらえるのだろうか。
そんな不安が、ずっと胸の奥にありました。

展示会に出展するなんて、
1年前の私には想像もできなかった。
でも、怖いと思う一方で、
この一歩を踏み出さなければ、何も始まらないと分かっていたんです。

でも、私の世界は確かにここにある

私はずっと、「紫月のアトリエ」で
派手さではなく、“空気”や“余韻”を大切にしてきました。

風の音が通り過ぎるような静けさ。
ふと心に灯る、小さな物語の断片。
ぬい服やアクセサリー、紅茶──
どれもが、言葉では語りきれない感情を
そっと手渡すような、そんな世界を目指してきました。

SNSやイベントで作品を並べるたび、
「なんか、落ち着く」
「見てるだけで癒される」
そんな声を、ぽつりぽつりといただいてきました。

それは、爆発的な注目を集めるようなものではなかったけれど、
確かに誰かの心に“残る”ものだったと思っています。

今回、展示会に持ち込んだのは、そんな私の“空気”です。
たとえビジネスの場であっても、
無理に主張を強めたり、業界っぽく装ったりせず、
「紫月のアトリエ」で大切にしてきた“空気ごと”持ち込んでみようと決めていました。

──だって、それが私の世界なのだから。

異色のブースで、静かに灯したひとつの物語

「Web販促&デジタル活用展2025」への出展が決まったとき、
私はひとつだけ、心に決めていたことがあります。
──“世界観”を、空間ごと届けたい。

並ぶのは、大手企業や専門サービスを持つプロたち。
そんな中で私のブースは、まるで異色でした。

ニュアンスカラーの花柄テーブルクロスに、アンティークなランタン。
ほんのりと照らされた空間に、物語を映すアクセサリーたち。
そのひとつひとつが、“とある探偵事務所”の世界をそっと語りかけてくる。

名刺交換やサービス紹介が飛び交うビジネスの空間の中で、
私のブースだけは、少しだけ“物語の中”にいるような空気が漂っていたと思います。

でも、それでよかった。

私は「この空気、なんだか気になるな」と思わず足を止めてくれた方と、
静かに目を合わせて、やわらかな会話を始めたかったんです。

ほんの数分でも、**“ディズニーの片隅のティールーム”**のような非日常を。
少し心が緩んで、ふっと何かを思い出すような余白を。

たくさんの人が言葉を交わしてくれました。
「まるで違う空気感」「ブースに引き寄せられました」
──そう言ってもらえたことが、何よりの答えでした。

私は、ちゃんと“物語を灯せた”のだと思います。

「なんだか、気になって」——その一言が嬉しかった

展示会を終えて、いちばん心に残っているのは、
名刺を受け取る瞬間でも、サービスの説明をした時間でもなくて。

「なんだか、この空気が気になって」

そんなふうに、ふと足を止めてくださった方たちの言葉でした。

きっと、私のブースは“正解”ではなかったと思います。
ビジネスに特化した展示会で、数字や事業の成果を押し出すでもなく、
そこにあったのは、静かに物語が香るような空間。

でも、「気になる」と感じてくれた方がいた
その“違和感”こそが、私にとっては希望のしずくでした。

「ブースに引き寄せられてきたんです」
「他とは違って、なんだか落ち着く空間でした」

そう言ってくださった方たちに、私は何度もうなずきながら思っていました。
私は“正しい”かどうかじゃなくて、心がふるえる瞬間をつくりたかったんだなって。

共感じゃなくても、共鳴でもいい。
一瞬、心のどこかが“ぽっ”とあたたかくなるような、
そんな余韻を届けられたのなら、もう十分だったのかもしれません。

私は、表現を仕事にしていく

展示会当日、私のブースにふらりと訪れてくださった
経営ゼミの先生たちが、ぽつりとこう言ってくれました。

「あなたのやってること、ちゃんと伝わってるよ」

その一言が、胸に静かに染みました。

私はこれまで、仕事としてアニメーションやマンガ動画をつくってきた。
“プロのクリエイター”として、誰かのビジネスを支える表現はしてきたけれど──
自分の“世界観”を、仕事として誰かに届けることには、ずっと不安があったんです。

売上につながるのか?
理解されなかったらどうしよう?
ビジネスの場に「物語」なんて、浮いてしまわないか?

でも今回、私が信じて差し出したものに、
たしかに足を止めてくれる人がいて、
「素敵な世界ですね」と笑ってくれる人がいて。

数字では測れない“手応え”が、そこにはありました。

私が届けたいのは、「刺さる言葉」じゃなく、「残る余韻」
売上じゃなくても、心にふっと灯る何かがあるなら、それでいい。
その灯りのそばで、静かに歩いていけたら、それが私の仕事。

──私は、表現を仕事にしていきます。
“幻想と現実をつなぐ”RIHOとして、これからも。

この経験が、私の次の物語を作っていく

「最近、動画が更新されていなくてごめんね」
そんなふうに、紫月探偵事務所の視聴者さんに思ってしまうことがありました。

けれど今回の展示会を通して、私は気づいたんです。

あの物語は、止まってなんかいなかった。

たとえ動画という形では発信できていなくても、
紫月探偵事務所の“空気”も“余韻”も、ちゃんとここに生きていた。
「とある探偵事務所?の世界観が気になって」と立ち止まってくれた方の言葉が、その証でした。

紫月探偵事務所は、“シリーズの更新”という意味では止まっているように見えるかもしれない。
でも、私はこの世界をずっと大切にし続けてきたし、
その想いは、アクセサリーや空間づくりという新しい形になって、また誰かに届いている。

だからもう、「まだ更新できていない」なんて言わない。
私は今も、この物語を“ちゃんと続けている”。

そしてこの展示会での出会いや手応えが、
次に紡いでいくストーリーのはじまりになっていく。

静かに、でも確かに。
私の物語は、続いていく。